福岡伸一『もう牛を食べても安心か』(300字読書日記vol.12)

もう牛を食べても安心か (文春新書)文春新書、文芸春秋、2004年12月、720円+税
ISBN:4166604163

科学ものではあるけれど新書だけあって読みやすく、やや感傷的な文章も散見するも、その効果の是非は置き、概ね害のない程度のスパイスになっている。
内容はもちろん狂牛病(ここではこう書くのがフェアだろう)についてだが、それがいかに広がり、そしてそこにいかに多くの利害関係や政治が絡んでいるかがわかる。もちろん鵜呑みにはできないが、きわめて政治的な問題を、「牛丼が食べられない」ことなど、感情レベルで取り上げ事態を歪曲化させているマスコミ各社の報道姿勢に対しては一定の批判足り得るだろう。
と同時に私たちも、目の前の「現実」だけではなく、そこに選択されなかった無数の現実にも目を向けるべきだと考えさせられる、が。