失うことのうつくしさ

●『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年)
監督:ソフィア・コッポラ
出演:スカーレット・ヨハンソンビル・マーレイ


飯田橋ギンレイホールで『ロスト・イン・トランスレーション』を観たが、いや、きれいな映画だった。スカーレット・ヨハンソンは、同じくギンレイで先月放映していた『真珠の耳飾りの少女』にも出演していたが、こっちの作品のほうが個人的には好きである。
東京という無国籍な、無秩序な都市を舞台にした物語で、人生という時をいきながら失われていくものを失われてしまったもの、そしてそれに対する思い、不安、諦め、希望などがとても感傷的にまとめられたと思う。
どこにでもある日常、雑多な空間、そこに流れる時間、そして失われる思いとそのことを受け入れる不安。歳を重ねた男と大学を出たばかりの若い女という、別の「世代」の2人が感じる痛みが、静かにシンクロしていく様子がとても切なく、きれいな作品だった。
きっといくつになっても、誰であれどこにいてどんな生活をしようと、生きていくとは何かを失いつづけていくことで、こうした不安や思いを抱きつづけるものだな、と考えさせられた。