高田明典『知った気でいるあなたのためのポストモダン再入門』(300

知った気でいるあなたのためのポストモダン再入門夏目書房、2005年3月、2400円+税
ISBN:48606203640

価値が対立することのみを認識しつづける緊張感だけが社会を進歩させる、という発言は、相対主義や折衷主義といわれがちな「ポストモダン」にあって、それらとは一線を画す意志の表れであり、著者の、この「血ヘドを吐く」不断の努力には共感する。
ただ、全体的に抽象的な議論が多いので、もう少し具体的なレベルでの話がほしかった(「ノイズ1号2号」というキャラクターが挿入され、彼らの茶々が問題点を歪曲化してある方向へと導こうとしていたり、散漫にさせていたのは残念)。例えば、他者との価値の相違を認めながら、自らの思想に忠実であることがいかにして、「共生」へとつながるのだろうか? 理想以上の可能性を語ってもらいたかった。