ボジョレ・ヌーボー狂想曲

今朝のフジテレビ「特ダネ」を見ていたら、そのなかの「特ダネタイムス」のコーナーで韓国の受験戦争の実態が紹介されていた(詳しくはhttp://www.fujitv.co.jp/tokudane/index.html)。なんでも「スヌン試験」と呼ばれる、日本でいうセンター試験のようなものがあって、その日には国をあげて協力体制をとるそうだ。交通規制(交通渋滞に巻き込まれてが受験生が遅刻しないように会社の始業時間を遅らせたり、英語のヒアリングテストの時間帯には、車のクラクションを鳴らすことが禁止されているそうだ)やら、後輩による派手な応援が繰り広げられるそうで、そのあまりにも突き抜けた様子が、試験なのかお祭りなのかわからず、端から見ているとけっこうおもしろかった。もっとも試験を受ける学生にとっては、韓国では出身大学がその後の人生を決めかねないぐらいの学歴主義社会だそうで(この情報も受け売りですが)、笑ってはいられないのだろうけど。
さて、日本はといえば、昨夜というか今日の0時に「ボジョレ・ヌーボー」が解禁になった。なんだか毎年聞いているようだが、今年はまれに見る当たり年の昨年を上回る輸入量だそうである。いたるところでボジョレ解禁を祝うパーティーが開かれていたようで、今朝のテレビでもいち早く飲んだ人たちが誇らしげに、「これを待っていた」「本当においしい!」と笑顔でインタビューを受けていた。はいはい、こちらも韓国に負けず劣らずお祭りである。まあ、初物のが好きな日本人、フランスものが好きな「文化人」にはこれ以上に刺激する食材はないのかもしれない。しかし、そもそもワインの初物ってそんなにおいしいのだろうか? ワインは醸造酒であり、醸造酒とは、糖分が酵母の働きによってアルコールと二酸化炭素に分解されてできる酒であるからにして、分解が不十分というのは、あんまりおいしくないということとニアリーイコールの気もする。まあ、日本酒の新酒もあるし、「軽めのが好き!」という人も多いだろうし、好きずきだけど。でも、そういう人に限って国産のワインは「味に深みがない、薄い、飲みやすいだけ!」なんていうんだから、よくわからん(じつはよくわかる)。
話は脱線したが、とにかくボジョレ解禁である。まあ、めでたいということで、近所のスーパーで世界一早い即売会なるものがあったのを冷やかしにいった。限定100人ということだが、まさかこんな商店街のスーパーで、深夜にそんなに並ぶのか?と思いきや、いるではないか。それも、けっこういる。おそるべしヌーボー!
で、なぜか冷やかしに行った私も列に並ぶことに。前に並んでいた学生らしき人は、とりあえず並んでいるようで、知り合いに電話してどうやら「いらない」と言われたのにもめげず並びつづけ、挙げ句どれを買っていいかわからないと悩んでいるところ、連れの友人に「無難なの選べ」と言われて、確かに無難そうなもの(「日本人にいちばん人気の銘柄です」とのキャッチあり)選んでいた。おおかたの日本人(もちろん私を含めた、である)のボジョレ購入の姿だろうね。お店も巧妙で、そうした購買者の心理を読んだ商品の配列がされている。はじめに安いものがあり、それをパスしたお客にちょっと高めなものと、そしていかにも高そうなものと並べ、次に日本人に一番人気をもってくるのはにくい。二番、三番にローズ、ペタジーニと高くて見るからに打ちそうな打者をもってきて敬遠でランナーをため、4番に清原。日本製かと気が抜けたピッチャーは、われらが清原、和製の大砲に油断して甘い球を投げる。そして見事にホームラン!(いいぞ清原! どっかいけ堀内!)。で、いちばんは誰よ?という苦しいツッコミはなしで、見事にみんなそれを買っていました(ただたんに日本人にいちばん売れているという、美しい横並びの精神の発露かもしれませんが)。さらにレジまでのわずか1メートルの間にチーズ、ハム、そしてオードブル。まさにホームランを打ってハイタッチでベンチに迎えられる高揚感でお会計へと進むのであります。
気がつけば私も、2本も(そう!二ホンも。日本人ですね。いや洒落でなくて)購入していました。まったくお祭り的な熱気に盛り上げられて、踊らされて。秋祭りで勢い余ってヒヨコを飼ってしまう心境ですな、まったく。
なにはともあれ、家に戻ってさっそく飲んでみた。で、感想は……。
うむ、……まずい、かな。いや、そうではなくて、好きな味ではない、と思います。
まあ、でもいいか。お祭りだし、うん、そうだね。
とまあ、収穫を祝う本来の思いとはまったく違うお祭りに踊り、酔いしれた夜でした、とさ。
でも、ボジョレの帝王ジョルジュ・デュブッフって、史上最強のマーケッターだよね。「ボジョレは畑で作らない。メディアで作るんだ」なんていってたりして。
ところで、きっと来年も買うね、私は(あー、バカバカ)。